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さくらんぼの味
今年も熊のシーズンとなった。清水寺の坊主が去年暮の今年の漢字に「熊」と書いたくらい近年は一年中熊が出て人を襲っているから熊のシーズンなど存在しないのかもしれないがそろそろ冬眠前の熊が食べ物を求めて活発に動き回る季節となった。今年は山のブナの実が豊作だというからそれなら安心なのかと言うとそうではないらしい。熊は人里に下りてきて食べ物を得たことで楽をして腹を満たすことを覚えたようだという。つまり山に食べ物が豊富でも熊は里にも町にも出るというのだ。
熊はさくらんぼも食べるらしい。さくらんぼといってスーパーで売っている山形産が有名な大きな赤いさくらんぼのことではない。公園や校庭、川沿いの道などで咲く桜のさくらんぼで熟すると真っ黒になる食用にはしない小さなさくらんぼのことだ。熊がそんなさくらんぼを食べているのなら冬眠明けでもなく冬眠前でもない初夏の街中もうかうかできないことになる。
ぼくも実はウォーキング途中に丘陵公園遊歩道の桜並木でさくらんぼを採って食べている。ぼくがさくらんぼを採る木は決まっている。というのは適当に採って食べているうちに同じ種類の桜でも木によってさくらんぼの味が異なることがわかったからだ。
食用ではないさくらんぼは果肉がまったくなく大きな種が汁のなかに浮かんでいる。もちろん種と皮は食べずに吐き出す。だから食べるというより汁を吸うのだがその汁は木によって味がちがう。ほとんどの桜のさくらんぼは酸っぱいがまれに甘みが強くておいしいさくらんぼの桜があるのである。
さくらんぼの食べごろは充分に黒くなったときで少しでも紫がかっているあいだは酸味が優るうえにその期間はとても短くて二日か三日ですぐにしわしわに萎んでしまう。
熊もやはり甘いさくらんぼを選んで食べているのだろうか。もしそうなら、お腹はふくれないから熊も味覚を楽しんでいるのかもしれない。 2026年9月20日 虎本伸一(メキラ・シンエモン)
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